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2024-05-06(Mon)

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2009-05-21(Thu)

突発小話(DFF現代パロ85)

なんとなく思いついたので。
わさびが書きたかっただけだったり。

…うんまあこんなことやってる場合じゃないんだけど逃避を兼ねて。

一応畳みます。

「あれ、スコールわさび苦手?」
「―――……」
 うっかりぴたっと止まってしまった。その反応こそが肯定の答えだ。
 クスと微笑したセフィロスが、スコールの前にある醤油の小皿を自分のものと交換した。
「お前の歳で無理に食べる必要はない」
「…」
「貴方もまだそんなセリフが板に付くような年齢ではないでしょう。サー・セフィロス」
「少なくともこの四人の中では最も年長だ。さまにならないということはないと思うが」
「…」
 黙り込んだスコールの正面に、もう一人黙り込んでいる男がいる。彼も同じ居心地の悪さを感じているらしい。
 彼は握られたものの結局使われていない箸をぱちりと箸置きの上に戻すと、じろっとセフィロスを睨んだ。
「…俺はあんたの護衛任務のためにここにいる。食事に同席するためじゃない」
「またその話か」
 面白がるようにククッと喉を鳴らした英雄は、取り皿に料理を一口ずつあれこれ乗せると、問答無用でクラウドの前に置く。
 人の話を聞けとばかりに更に睨み付けられるが、それもどこ吹く風という様子だ。
「護衛だというのなら、こうやって俺の傍に居ればいい。食事をするチャンスは今しかないぞ」
「だから、俺は別室で…」
「SPが護衛対象から離れてどうする。交替要員はいないのだろう」
「あんたが勝手に帰したからだ!」
「大きな声を出すな。向こうに聞こえたら面倒だぞ、お前の方がな」
 ちらり、と視線を送った先は、通常会話が聞こえない程度の距離を置いた先にある個室。完全に仕切られているため、外から中に誰がいるのかは見えないが、実はそこにはスコールの父であるこの国の大統領ラグナをはじめ、世界的複合企業体神羅グループのトップ、隣国の王、魔女育成機関の創設者、更にはブリッツボールのトップスター等々のすさまじい面子が揃い、向こうは向こうで食事中なのだ。
 くっ、と小さく呻くクラウドに、セシルがクスクスと微笑んでいる。
「腹が減っては戦はできぬって言うよ。観念して、ご飯にしちゃったらどう? 美味しいよ、ここの料理」
「…。俺の味方はスコールだけか」
「ニ対ニで丁度いいじゃない」
 壮絶な美貌がふわりと優しく微笑むと、誰も逆らえないのだな。と、スコールはセシルに出会って学んだ。クラウドも同じ事を思ったのだろう、一瞬目が合ったが、諦めたような溜息を落とし、渋々箸を取った。
 それにしても居心地が悪い。ここは個人的にも馴染みのある店だし、実際とても良い雰囲気で料理も美味しい。客人をもてなすのに良い店だ。それは否定しない。他の客層も決して悪くはないが、だがどうしてこんな一般の店なのだろうと思う。
 超のつく要人達の食事会なのだから、プライバシーが守られ警護し易い料亭であるとか、ガードマンを配しやすいホテルであるとか、予約専用で一般人には中々入れないような高級料理店を手配するのが筋だろうと思うのに。
(よりによって全面ガラス張りの、普通の街中にある創作フレンチの店を、国家の要人やトップスター達の接待に使うとはな)
 いくら個室があるといってもかなり問題だと思う。あれで長年大統領が務まるというのだから不思議だ。もっとも、そんな男が実の父親だとスコールが知ったのは、最近の話だが。
 とにかく、今夜は面通しだけだというから渋々来てやったというのに、蓋を開けてみれば結局こっちはこっちで会食のようなものだ。しかもこちらは個室ではないので、思いきり街中の人々の視線に晒されている始末。特に女性から好奇の視線がちらちらと向けられて、居心地が悪いことこの上ない。
 ここに揃っている四人は、全員タイプの違う美形ばかり(スコールは自分だけは対象に入っていないと思っているようだが、彼も立派に仲間である)。世界中にその名を轟かせる英雄であり圧倒的な存在感を持つセフィロスと、男女問わず魅了する美貌の持ち主であるセシルが同じテーブルにいると尚更、相乗効果で店の外からも視線を集めてしまう。
(…そういえば二人とも銀髪だな。…それがどうしたって話か)
 あまり関係のないことがぽんと思い浮かんでくるあたり、そろそろ精神的な疲れが限界値を超えてオーバーフローしているのかもしれない。
 そのオーバーフローした頭に、ふ、と涼風が吹いた。
「お待たせ致しました。春野菜の天麩羅盛り合わせと、鮪のブロックステーキ魔女ソース添え、茶蕎麦のサラダでございます」
 歩み寄って来たウェイターは、既に結構な数の皿が載っているというのに、巧くその隙間にそっと新しい皿を下ろす。
 空いた皿を手に取って、ふと、彼は醤油の小皿を目に留めた。
「…」
 スコールが顔を背けると、その涼風からふっと微笑む気配がした。それでもスコールは、ばつが悪くて目を合わせることができなかった。…約束を突然フイにしたのは、スコールのほうだったから。
 彼は最初から赦しているし、そもそも怒ってもいない。それが分かるからこそ、余計に居た堪れない。

(……………怒るほどの意味も……ない…ってこと、なのか…?)

*   *   *

『バレてたみたいだな。わさび』
「………」
『だから言ったじゃん。スコールって案外顔に出てるんだって』
 愉快そうに笑う彼の声の後ろから、チャリ、と小さな金属がぶつかる音。ああ丁度今鍵を開けているところなんだな、とぼんやり思う。
 本当なら今頃、一緒に彼のアパートで過ごしていたはずなのに。…そう思うと、悔しいような切ないような、何とも言えない気持ちになってくる。
『それにしても、すげー光景だったな~。ウチの大統領の息子だろ、王位継承権に最も近いって言われてるバロンの騎士様だろ、神羅グループが擁する世界的な英雄に、そのパートナーである魔晄の戦士! それが一つのテーブルでメシ食ってるなんて、ありえねぇよな!』
 面白がるように茶化して言いながら、扉を開け、閉める。電気をつけて、一人用の小さな冷蔵庫の上に鍵を置いて、鞄を床に置いて…。
 彼の動きが、仕草が、まるで目の前で見ているかのようにすべて目に浮かぶ。
「バッツ」
 呼びかけると、饒舌だった彼がふっと口を噤んだ。
「…今日は、すまなかった」
 折角久しぶりに、ゆっくりと夜を過ごせるはずだったのに。

 学校が終わったら合流して、アウトレットショップを見て回って。バッツも本当なら今日は一日仕事が休みのはずで、だから彼の部屋で一緒に夕飯を食べて、そのまま泊まっていく。そう、予定を組んでいたはずだった。
 なのに昼休みに突然、学校に高級車が乗りつけたかと思ったら、父と父の秘書達が出てきて教師達とあれこれ話し、あっという間にスコールはその高級車に放り込まれ、突然だけどこれから非公式な国際会談があるんだお前も顔出して頼むこの通り今日スケジュール空いてたよな? と、縋るような目で「お願い」され、断り切れなかったのだ。…いや、ラグナ自身はどう思っていたのか知らないが、車の中でさえ逃がさないとばかりにスコールを左右から囲んでいた秘書達の視線は、はなからスコールに拒否権などないのだと突き付けるようなものだった。
 いい加減に大統領の後継として自覚を持て、と言わんばかりの、高圧的な視線。
(冗談じゃない)
 放っておいてくれてよかったのに、とスコールは眉間に皺を寄せる。
 ラグナにのっぴきならない事情があったことは聞かされたし、理解しているつもりだ。だが、分かったし怒ったり怨んだりもしていないから放っておいてほしかった、というのがスコールの正直な思いである。正式に「ラグナ大統領の息子」と認知されてからというもの、やたらと注目は浴びるわ、警護は付くわ、自由な時間は減る一方、バッツとの距離も開く一方で、たまったものではない。

『スコール』
 耳元から、携帯越しに優しい声。
『おれは、怒ってないから。そりゃ、残念だったし、あーあ、ちぇっ、とか思ったけど、でも怒ってはいないから。だからお前も、親父さんのこと怒らないでやれよな』
「…それは、約束できない」
『察してやれって。施設に預けたままになっちまって、苦労ばっかりしてきただろ、お前。だからその分を取り返そうって必死なんだよ、きっと』
「……どういうつもりでも、俺の意思を無視して暴走されるのは迷惑だ」
『きっついなぁ~』
 刺々しくなっていくスコールの声を和らげようとするように、バッツはクスクスと微笑む。
『まだ出発まで二周間あるんだからさ、慌てるなって』
「―――――え?」
 突然、刻限を告げられて、一瞬頭が真っ白になる。
『あれ、言ったよな? 次はベベルの近くまで足伸ばすって』
「…それは、聞いたが…」
 いつ発つとまでは聞いていない。
 愕然とするスコールを余所に、ごめんごめんと笑い混じりに軽く謝罪してくるバッツ。ちょっと待て、なんでそんなに軽いんだ。そんな大事なことを忘れておいて、どうして。
『あの近くにさ、すっげー綺麗な泉があるらしいんだよ。レナに見せてやりたくてさ。ほら、タイクーンってベベルとはあんまし交流ないだろ?』
「………やっぱり、帰りはタイクーンに寄るんだな」
『うん。あーいや、バルにも寄る。今日ファリスから頼まれた事あるし、ガラフもそろそろ顔出せって言ってるしな』
 きり、とスコールの胸が痛む。
 今でこそ簡単に会うことが難しくなってしまったが、共に旅をして戦った仲間達なのだと、その話は聞いているし、気持ちは分かる。頭では分かっているつもりだ。けれど、心は納得できない。
 自分は彼女達よりも優先される事はないのだろうか。彼女達のための予定は必ず守るのに、自分との予定が突然潰されても怒らないというのか。
 この苛立ちの正体は分かっている。これは嫉妬だ。
『クルルも最近、女王様になるための英才教育っていうの? 始まったらしくてさ、全然外に出てないみたいなんだ。だから、写真沢山持って行ってやろうと思ってるんだ』
「…そうか」
『それでさ、今日確認取ろうと思ってたんだよ。お前の写真も持ってって、みんなに見せてもいいか?』
「…別に」
 雲がかかったような、もやもやとした内心を隠すように、ぶっきらぼうになってしまう声。けれど、携帯の向こうでバッツはホッとしたように笑った。
『ほんとか? よかった、お前結構そういうとこ照れ屋だからダメな確率のほうが高いと思ってた』
「…別に面白くもないだろうがな。俺の写真なんか」
『………』
 ふ、と不自然な沈黙。
『あー、じゃあ、また予定空けといてくれよ。今日の仕切り直ししようぜ』
 どうかしたか、と問い掛ける前に、バッツのほうから話題を変えられた。何か隠された気がしないでもないが、嫉妬やら怒りやらで少々疲れ始めていたスコールは、今度会った時に直接訊けばいいか、とスルーしてしまった。
「分かった。…バッツ、今日は本当に」
『謝るなよ。今日はたまたま運が悪かっただけで、誰も悪くない。そうだろ?』
「………」
『ほら、返事!』
「…あんたがそう言うなら、そういうことにしておく」
『スコール…』
 困ったように苦笑するバッツ。携帯越しに感じる吐息の気配がもどかしい。
『…おやすみ。また明日な』
「ああ。お休み」
 名残惜しさを語るかのように、数秒の間。それから、通話が切れた。
 溜息をついて携帯を放り、ベッドに体を投げ出す。今日は疲れた。もう何もする気になれない。適当に風呂に入って寝てしまおう。課題は明日の朝一でゼルかアーヴァインをつかまえて写せばいい。
 ごろりと体を横向きにして壁と向き合ったスコールは、ままならない恋を思ってもう一度溜息を落とした。

*   *   *

『バッツぅ~…スコールが部屋から出てきてくれないんだ~…』
 大の大人がめそめそと(比喩でなく本当に泣いている様子だ)、と思わないでもないが、それが可愛いと思わせるところが彼の人徳であり、カリスマの一部なのかもしれない。
「そりゃ、今日のは逆効果だよ。スコールの予定聞かずに拉致ったんだって?」
『予定はちゃんと確認したぞ!! バッチリ空いてたから、これは狙い目だと思って!』
「おれと約束してたから空けてあったんだってば」
『ええーっ!! そんなの聞いてねぇー!!』
「携帯のカレンダーならともかく、事務的に報告する予定になんか書かないだろ、デートだとか、わざわざ」
『うぅ…それもそっか…うっわー失敗したー!!!』
 あまりの嘆き様に、思わず笑ってしまうバッツ。
『笑い事じゃなーい!!』
「ていうかさ、なんでデート邪魔されたおれが、邪魔した張本人に愚痴られてんだ?」
『あっ、そ、それもそうか…。ごめんな、悪かった!』
「しょうがないよ、悪気はなかったんだろ?」
 チーン、と電子レンジが音を立て、あ、と話し相手の声のトーンが変わる。
『悪い悪い、今から晩メシか。んじゃそろそろ切るな』
「スコールのこと、今あんまり突付かないほうがいいぞ。多分まだ機嫌斜めだと思うから」
『う…わ、わかった…。ありがとな』
 それじゃ、と電話が切れた。
 電子レンジから取り出したタッパーをそのままちゃぶ台に乗せ、マグカップに玄米茶をいれて、本日の夕食。タッパーの中身はファリスが詰めてくれた店のまかないである。
 テレビを付けると、丁度何かのニュースで、つい今まで携帯で喋っていた相手が映っていた。バッツは思わずぷっと笑ってしまう。
(大統領とタメ口で喋ってるなんて、フリオニールが聞いたら腰抜かしそうだよな)
 しかし考えてみれば、自分自身は一般人、むしろ生活水準的には中の下といったところのはずなのだが、やたらと王族やら政治家やらに知り合いが多く、ほとんどの相手とタメ口で喋っている。レナにしろ、クルルにしろ、ガラフにしろ、そしてラグナにしてもそうだ。
 ぱらり、と手元に出したフォトブックを開く。
 これにはスコールの写真をまとめてある。彼は改めて写真を撮られるのが苦手なので、ほとんど携帯電話のカメラで撮ったものをプリントアウトしたもの。その結果、勉強している横顔や、自販機でコーヒーを買っているところなど、スコールの日常を垣間見れるようなショットばかりが集まった。
(まぁでも、レナ達に見せるにはかえってこの方がいいか)
 にんまり、と自然に顔が緩んでしまう。

 写真を見せに行くその理由が、「バッツの恋人ってどんな人?」と尋ねられたから見せびらかしに行くのだと知ったら、彼はどんな顔をするだろうか。
 

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海原未漣
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自己紹介:
ヴァナ・ディールとエオルゼアに分身を降り立たせるも散歩目的というマイペースな我が道爆走ゲーマー。一応まだ文字書き属性の腐女子でいるつもり。NLBLGLおかまいなく雑食。ときめきや切なさの刺さるLOVEであればね。きゅんきゅんしたいんだよ!
只今テイルズ熱再燃中につき、ほぼほぼTOXプレイ日記と化しております。
他、現在プレイ中…GE2RB、TOV、TOレーヴユナイティア、FFシアトリズムCC。
プレイ途中で一時停止中(積んでるとか言わない)…TOA、TOGf、P4G、DoD3、ニーア、DQH、シャイニングレゾナンス、討鬼伝、BBCC、BBCP、FF11、FF14、ドラゴンズクラウン。
プレイ開始待機中…TOX2、TOツインブレイブ、月英学園kou。
クリア済…P4Q(4主)。
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