時に、コズミック・イラ75。
全地球国家及び全プラントがひとつになって恒久的な平和を守るべく、終戦処理がなされた。結果、過剰な戦力保有は平和維持の妨げとなる、との国連議決によって、全ての国家の軍を解体・再編。代わりに治安と秩序を維持するものとして、警察組織が強化された。
プラントにおいても例外ではなく、今まではザフト軍が行ってきた警備等についても警察が行うこととなり、失脚したエザリア・ジュールに代わって新たに法務担当となったタリア・グラディス議員のもと、大掛かりな再編が行われることとなる。
(※デュランダルの議長就任やユニウスセブン落下、デスティニープラン等、種運命における戦争は起こっていない設定)
そんな中新設された、『特別犯罪対策室』。
発表された人事は、意外としか言いようがなかった。
* * *
「ヒマねぇ~…」
「いいじゃない。警察も軍も、ヒマなのが一番世の中のためだよ」
溜息をつきながら携帯をいじる姉に、苦笑しながら答える妹。だが、姉は更に溜息を重ねる。
「あんたって、ほんとにテンプレ通りのいい子ちゃんな答えしかしないんだから。もうちょっと冒険してみなさいよ」
ムッと唇を尖らせる妹の肩に、するりと伸びる褐色の腕。
「まァまァ。そうやってスレてないところが、メイリンちゃんのチャームポイントなんだからさ」
「ディアッカさん! もう、ミリアリアさんに復縁断られたからって、私にちょっかい出すのはやめて下さい」
「うぐっ。手厳しいなァ」
ぺしっと腕をはたかれ、やぶへびとばかりに離れる褐色金髪の男。それを苦々しく見ていた白い肌に銀髪の青年のところへ、大人しく戻る。
「また振られちまった」
「お前は誠意がないからだ! まったく、それにしても暇だな…報告書を書こうにも、肝心の報告する事がない」
「できた!」
その隣からは、かつてザフトを追い詰め、地球軍の核からプラントを守った、第三勢力の戦神たるフリーダムのパイロットが、その経歴とは全くそぐわない無邪気な声が上がった。
「ねえ、ヒマなんだったらさ、この新しいプログラム試してみてよ。データ取りたい」
「キラ…お前ね、こないだ勝手にMS動かしてデュランダル参事官からネチネチお説教されたの忘れたのかよ」
「ネチネチお説教…。ディアッカ、面白いこと言うね。でもぴったりかも」
「おい! 参事官に対してどういう言い草だお前ら!」
それにしても、と。
三人も顔を見合わせて溜息。
「ヒマだよなァ…」
「そうだねー…」
「…」
「そもそもプラントは治安がいいんです。特別犯罪対策室なんて、必要なかったんじゃ」
「みんな、事件だ!」
ブツクサと愚痴をこぼしかけたシンの声をさえぎって、緊張感のある声が響いた。
その先を振り返ると、少し長くなった深い夜の空の色をした髪を後ろで一つにまとめた青年が、携帯電話を片手に部屋へ駆け込んできたところである。
「ブロックE-3の5号緑地帯から変死体が発見された。隣接する公園にいた主婦が不審な人物を目撃している。これがホシと見て間違いないだろう。また、被害者は身元を特定できるものを何も持っていなかった」
「何も?」
「そうだ。カードも携帯もIDも全て」
「でも、スーツ姿ですよね。この近くってオフィス街だし…」
「犯人が持ち去った?」
「そう考えるのが自然だな」
「被害者の身元を特定されたくなかったのか、単に金目の物を全部持ち去ったのか…」
「その辺りも含めて捜査を開始してくれ。キラは科捜研のマリューさんと協力して凶器の分析、ルナマリアは目撃者の事情聴取と似顔絵の作成、イザークとディアッカは現場周辺の聞き込み、シンとレイは近辺の防犯監視カメラのデータを回収、メイリンはその分析と被害者の身元特定」
てきぱきと役割を割り振って、「GO!」と手を叩く。
各々がそれぞれの役割を果たすべく、部屋を出て走り出した。
「アスラン!」
ふと、出て行く面々の最後尾にいたキラが振り返る。
「どうした」
資料をまとめていた手を止めて、アスランもキラを振り返る。彼はニコッと微笑んだ。
「僕は今の仕事、アスランにすごく合ってると思うよ」
「………。おだてても何も出ないぞ。ほら、早く行ってこい」
「了解、ボス」
早く解決したらいい。いや、してみせる。
同じ決意を胸に、アスランはデスクに座り、キラは科捜研へと走り出した。
ラクスは議長、カガリはオーブ元首で、多分マリューさんは交流人事とかなんかそんなんでオーブ自治警察隊からの招待研究員みたいな。バルトフェルドさんもそのあたりのどっかにいるんでしょう。
運命でのドンパチがなかったことになっているので、ネオさんは組み込まれていません。多分何かの事件でDNA鑑定したマリューさんが「これと一致する人物は…でも、まさか…彼は死んだはずなのに…」とか呆然とするエピソードが出てきて登場するんでしょう。
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