「やっと出てきやがったか、レプリカ」
ナゾの建物の中で思う存分遊んで出てきたルーク達を、大変不機嫌顔のアッシュが出迎えた。その後ろにはリフィルやクラース達もいる。
「この非常時に遊び呆けやがって。緊張感のない奴だ」
「アッシュも来ればいいのに。面白いぜ!」
「フン! 誰が劣化レプリカなんぞと馴れ合うか!!」
「でもわたくし、ちょっとやってみたかったですわ」
「ナ、ナタリア…」
うっ、と声を詰まらせてしまうアッシュ。ルークとロイドの後ろでクレスがクスクス微笑する。
ところで、待ちくたびれている間に何か軽い手料理でも振舞ったのだろうか。まともに被害に遭った様子のジーニアスが、おなかを押さえて目を泳がせていた。
「…に…人間なんて…きたない………」
がくり。
「あら、お口に合いませんでしたかしら?」
「………」
はぁ、とティアがため息。
「そんなにヒマだったのなら、入ってくればよかったのに」
「我々も勧めたんですけどねぇ。誰かさんが最初に『王族に連なる者がやる遊びじゃねぇ』なーんて意味のない意地を張ってしまったものだから、入るに入れなくなったようですよ。そのくせ中を気にしてずっとソワソワしてるんですから、始末におえません」
「なっ、だっ、誰がソワソワしてただと!? ええい、そんな事より、さっさと根源精霊とやらのところへ行かねぇか!! この屑が!!」
「わかってるよ~。ちょっとくらいいーじゃん、せっかくクレスやロイド達と友達になれたのにさ」
「なんだと!?」
「あーはいはいはい、そこまで。二人とも落ち着けよ。それこそ、ケンカしてる場合じゃないだろ?」
「…。チッ!」
お約束のガイの仲裁で、やっと二人の小競り合いに強制終了がかかった。だがアッシュの不機嫌はまったく収まる気配を見せず、眉間のしわをより深くさせてぷいっと行ってしまった。
「…あら? ルーク、何を持っているの?」
ぎくっ。
目敏くティアに気付かれ、ルークは気まずい顔になってしまう。
「あー…いや、別に何も…」
「さては、中から何か持ち出したのね。駄目じゃない、勝手に…」
大事そうに握られた左手を開くと、中からドンジャラの牌がひとつ出てきた。
それは、アッシュの絵が描かれたもの。
「………ルーク…」
こっそり大事にしていたおもちゃを親に見つけられた子供のように、顔を赤くしてしまうルーク。
「いや…すげー楽しかったからさ、次はアッシュも一緒に来ればいいのにって、チェスターとも一緒に遊んだらわだかまりなくなるんじゃないかと思って、あいつらすごくいいヤツだし、アッシュとも…みんなで仲良くなれたらいいのにって、ほんとは、さっきも…そう誘うつもりで…」
「…で、それは自分のお守りにするつもりだった?」
いつも別行動のアッシュ。回線もルークからは繋ぐことができない。
だからせめて、何かアッシュをかたどったものを持っていられたら。大事な大事な、自分だけの宝物として。
怒られた子供のようにうなだれてしまうルークに、ティアは小さく微笑む。そして、アッシュの牌をもう一度握らせた。
「ティア?」
「…きっと、ひとつくらい予備があるわ」
ぱあっとルークの顔が輝く。ティアは頷いて、移動しようとする大人組のもとへルークを促した。
今度中に入った時には、ルークの牌をこっそりアッシュの懐に放り込んでやろうと決めて。
…あれ? フタを開けたらルクティア気味…??
いやいや、ルークはアッシュ大好きだから!!
アッシュもルークがロイドやクレス達に懐いてるのが気に入らないだけだから!!
アシュルク成立だよね!? ね?
(ってこんなとこで説明補完してもな;;)
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